大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和49年(行ク)62号 決定 1975年1月24日

東京都小平市美園町二一二番地

申立人

金沢茂

右代理人弁護士

川口厳

嶋田喜久雄

斉藤展夫

鈴木亜英

二上護

東京都東村山市本町一丁目二〇番地

相手方

東村山税務署長

塩沢精一

右代理人弁護士

島村芳見

右指定代理人

佐々木宏中

根本孟郎

宮地夏雄

蟻坂欣一

右申立人からの文書提出命令申立事件(本案、昭和四七年(行ウ)第一一二号更正処分決定取消等請求事件)について、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件申立を却下する。

理由

一  本件申立ての要旨

申立人の昭和四三年分の所得税につき更正処分をするにあたり立川税務署長がした調査内容を立証するため、民事訴訟法三一二条三号にもとづき、相手方の所持する「元立川税務署職員八巻則行、同山田節および同松浦和雄がそれぞれ作成した申立人の昭和四三年分所得税についての調査書」の提出命令を求める。

二  相手方の意見の要旨

本件申立てにかかる文書は、申立人の本案において取消しを求めている更正処分の適法性の立証に必要ではなく、また、立川税務署長が右更正処分をするにあたり自ら調査のうえ収集しあるいはその結果を整理したメモ状のものを多数含む種々様々な文書の集りであって、もっぱら内部における自己固有の行政事務執行の便宜上作成した自己使用のためのみの内部文書であるから民事訴訟法三一二条三号に該当しないものである。したがって、本件申立ては不適法であるかあるいは理由がないものである。

三  当裁判所の判断

本件申立てにかかる文書は、立川税務署長が申立人の昭和四三年分の所得税につき更正処分をするにあたり、もっぱら内部における行政事務執行の便宜上作成した自己使用のためのみの内部文書であるから、民事訴訟法三一二条三号前段にいう「文書カ挙証者ノ利益ノ為ニ作成セラレ」たものでないことはもとより、同号後段の「挙証者ト文書ノ所持者トノ間ノ法律関係ニ付作成セラレタ」ものでないといわなければならない。

してみれば、本件申立ては理由がないのでこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 高津環 裁判官 牧山市治 裁判官 上田豊三)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例